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2.1 画像の性質

画像ファイルにはさまざまな形式がありますが,それらの違いはコンピュータ内部 での画像データの扱い方によるものです.画像データの扱い方には, 次のような要素があります.

コンピュータ上で画像を扱うにはそれぞれの要素を理解して,画像ファイルの形 式を適切に使い分ける必要があります.

2.1.1 ビットマップ画像とベクトル画像

コンピュータ上での画像を大別するとビットマップ画像とベクトル画像の2種類 に分けられます.


ビットマップ画像

``ビットマップ画像''とは, 画像をピクセルという小さな点の集合として扱う画像です. 新聞の写真を虫めがねで拡大して見ると,小さな点が集まって表示さ れていることがわかります,ビットマップ画像ではこれに近い原理 で画像を表します.

例えば赤い円を表現しようとするときに,ピクセルを赤く塗り,円の輪郭を形作 るように集めたものとして表現します.また文字を書くには,文字の形をした領 域を埋めるピクセルの集合として表現します(図[*]).

図: ビットマップ画像の拡大

ビットマップ画像は,おもに写真や手描きの絵など,色と色が混ざりあって全体 を構成するような画像をコンピュータで表現する際に利用します.また,コン ピュータはどんな画像であっても,ディスプレイに表示する際には最終的に内 部でビットマップ画像に変換して表示するため,コンピュータの画面それ自体 を画像として扱いたいときなどにもこの形式を利用します.

ビットマップ画像を扱うアプリケーションを, ペイント系画像ツールといいます. CNS では, Photoshop ([*]), XPaint ([*]), GIMP ([*])などを利用できます. また,スキャナ([*])を利用して, 写真などをコンピュータに取り込んだ場合もビットマップ画像となります.

2.1.1.1 ベクトル画像

ベクトル画像とは,座標と数式の組み合わせによって直線や曲線を定義するこ とで画像を表現するものです.

例えば赤い円は`赤い1mm幅の半径5cmの円を,座標(28, 64) を中心として描く'というように表現します.また文字については,`『あ』とい う文字を,明朝体という字体を利用して12ptの大きさで座標(15, 33)から書く' というような表現方法を利用します. このため,拡大や縮小を行っても,コンピュータが再計算を行って,そのサイ ズに合わせて表示し直すため,ビットマップ画像のように細部の形が崩れるこ とはなく,輪郭のはっきりした線を描けます(図[*]).

図: ベクトル画像の拡大

``ベクトル画像''は,文字やイラストなどの表現に適 しています.一方,写真のように,隣接物の間で色と色が重なり合ったり,光の 微妙な差異があるような複雑な画像情報はベクトルデータで表現するのに は適していません.

ベクトル画像を扱うアプリケーションを, ドロー系画像ツールといいます. CNS では, Tgif ([*]), Illustrator ([*]) などを利用できます.

2.1.2 色表現

コンピュータではディスプレイに色を表現する際に,赤,緑,青の3原色 を混ぜ合わせることですべての色を表現する加色混合という方法を用います.しか しユーザが色指定を行う方法として,目的に応じてより利便性の高い方法で画像 の色を扱えるように,数種類の色表現の方法が用意されています.


2.1.2.1 RGBカラー

RGBカラーはRed,Green,Blueの3原色の強さをそれぞれ数値で指定し,その組 み合わせによって色を表示します.アプリケーションによって,RGB画像,RGBフル カラー,RGBモードなどといいます.

一般的には,各3原色の強さをそれぞれ8bit (256段階)の数値で指定し,3原色 の組み合わせにより8×3=24bit (16,777,216色)を区別して保持する形 式が用いられています.人間が識別可能な色数はおよそ7,500,000色であると言われて おり,これだけの色を扱えれば実用上問題はないと考えられています.

コンピュータで表示したい色を指定する場合,Red,Green,Blueの3原色を,3桁 の10進数もしくは2桁の16進数で表記します(表[*]).


表: 10進法と16進法による色の表記

10進数(RGB) 16進数(#RRGGBB)
0 0 0 #000000
255 255 255 #FFFFFF
255 0 0 #FF0000
0 255 0 #00FF00
0 0 255 #0000FF
255 0 255 #FF00FF
255 255 0 #FFFF00
シアン 0 255 255 #00FFFF

16進数は,16で1桁繰り上がる数の数え方のことです.ただし,1文字で表せない 数値(1015)はアルファベット(AF)で表され,10進数の 255は16進数のFFに相当します.表記方法は Red,Green,Blueの順番で値を16進数で表し,#の後に続けて書きます.


2.1.2.2 インデックスカラー

インデックスカラーは,カラーマップ(カラーテーブル)という色の目次(イン デックス)を用意し,各ピクセルの色の情報を,その目次への参照によって保 持する形式です.

一般的には,色目次自体はRGBカラーによって色の情報を持っているため,表 現可能な色彩領域はRGBカラーと同一です.しかし,色目次の数に256個などの制限 があり,同時に表現可能な色数は色目次の数によって制限されます.

同時に使用する色数が少なければ,RGBカラーモードのように各要 素ごとに直接色情報を保持するよりも要素ごとの色情報を小さくできるため, 画像全体として必要な情報量を縮小できます.


2.1.2.3 CMYKカラー

CMYKカラーとはCyan,Magenta,Yellowの3原色の混合による色表現 を基本に,白黒の部分を特別に扱うBlackの値を保持し,あわせて4原色を用い る色表現の方法です.アプリケーションによって,CMYK画像,CMYKフルカラー, CMYKモードといわれています.

フルカラーの印刷物の多くはこの4原色のインクを混合する ことで実現されます.画像の印刷出力が目的である場合,途中の編集作業は RGBカラーで行っても最終的には画像ファイルをCMYKカラーによる色表現を用 いたものに変換することがよくあります.


2.1.2.4 グレースケール

モノクロの画像を白から黒までのグレーを階調表現し,モノクロの写 真などを画像として扱う際に利用されます.

一般的には,白から黒までを256階調(8bit)に分けて色を表現します.色彩を必 要としなければ,RGBカラーに比べて約1/3のサイズに画像ファイルを縮 小できます.


2.1.2.5 白黒2値

モノクロの画像を,グレースケールの中間調のグレーが存在しない白か黒かの どちらかの点の集合として表現します.中間調のグレーは,ある領域について黒 い点と白い点の数を調整することで領域全体として疑似的に表現する場合も あります. ピクセルなど,画像の各要素ごとに必要な色情報が0か1かの最小の値で済むた め,画像ファイルのサイズは小さくなります.

2.1.3 非圧縮と可逆,不可逆圧縮

一般的に,ビットマップの画像情報量 は,文字情報に比べると非常に大きくなります. ビットマップの画像情報は,画像がより大きく,よりきめ細かくなるに したがって大きくなります.単純計算では同じ形式の画像は 面積が2倍になれば画像情報のサイズも2倍になります.

画像ファイル内部での情報保持方法には,非圧縮,可 逆圧縮,不可逆圧縮の3種類があり,それぞれファイル形式によって 使い分けられます.

2.1.3.1 圧縮と非圧縮

画像ファイルのサイズより品質を重視する場合や,コマンドで画像ファイル の加工を行う場合, 複数の機種やアプリケーションを利用して画像ファイルを作成する場合などには, 圧縮せずにファイルを保存します.その場合に は,非圧縮型の画像ファイル形式を利用します.

圧縮形式の画像データは圧縮方法によっては,もとの画像の何らかの情報を省 略して圧縮することがあります. 画像が多少劣化してもファイルの大 きさを小さくしたい場合やWWWなどネットワークで転送する必要がある場 合などには,圧縮型の画像ファイル形式を利用します.

2.1.3.2 可逆圧縮と不可逆圧縮

圧縮方法は可逆,不可逆の2種類に分類できます.

可逆圧縮とは,画像情報を圧縮する際にもとの情報を失わないように,再計算 して展開し直せばもとの画像を同じ状態で得られる圧縮方法です.圧縮した ファイルを展開したとき,もとの画像の詳細まで再現したい場合には可逆圧縮 のファイル形式を利用します.

不可逆圧縮は逆に,多少は画像の詳細な部分が失われてもファイルの大きさを より小さくしたい場合に用います.特に,写真などの自然画像については,圧縮 を行っても細部の劣化が人間の目にはあまり認識できないため,不可逆圧縮の ファイル形式の利用に適しています.