LaTeX/LaTeXによる文書整形の応用/段組を制御する

LaTeXの1ページの本文領域は何も指定しない場合には1段組で整形されますが,2段組の整形を行うこともできます.この場合本文領域は左右2つのカラムに分けられて出力されます.2段組にするには次の2つの方法があります.

  • twocolumnクラスオプションを指定する
  • \twocolumnコマンドを用いる

これらはどちらも基本的に本文領域を2段組にしますが,若干異なる点があります.次に,2段組と1段組の違いをまとめます.

4.7.1 2段組と1段組との違い

2段組と1段組は次の点で異なります.

  • 本文領域を左右2つのカラムに分割
  • abstract環境(p.)の出力位置
  • \newpageコマンド(2.132.13)の機能
  • figure*およびtable*環境()が利用可能

このうち2段組におけるabstract環境と改ページコマンドについて説明します.

2段組でのabstract環境

abstract環境は,1段組では文字サイズがsmallで``Abstract''と表示がつくquotation環境として扱われます.() 2段組では番号なしの1つの節(section)として扱われます.この違いを図に示します.


図:1段組と2段組との abstract環境の違い

Abstract
鶴見線大川支線.首都圏で唯一旧型国電が走る線区であった.がそれも1996年3月15日で幕を閉じた.今回はその首都圏唯一の旧型国電であった``クモハ12形''にスポットを当てる.


1 鶴見線大川支線

京浜東北線鶴見駅の2階部分,頭端式のホームから伸びる一条のレールが鶴見線である.そして大川支線はその鶴見線の武蔵白石駅から東京湾に向かって伸びる約1kmの支線である.途中駅はなく,武蔵白石駅と大川駅の2駅しかない,珍しい路線である.



1段組の場合


Abstract

鶴見線大川支線.首都圏で唯一旧型国電が走る線区であった.がそれも1996年3月15日で幕を閉じた.今回はその首都圏唯一の旧型国電であった``クモハ12形''にスポットを当てる.


1 鶴見線大川支線

京浜東北線鶴見駅の2階部分,頭端式のホームから伸びる一条のレールが鶴見線である.そして大川支線はその鶴見線の武蔵白石駅から東京湾に向かって伸びる約1kmの支線である.途中駅はなく,武

width 0.1pt


蔵白石駅と大川駅の2駅しかない,珍しい路線である.そしてそこには昔ながらのチョコレート色の,それもたった17mしかない1両の電車がガタゴトと力強く走っていた.

形式はクモハ12形.60年以上も現役で走り続けた頼もしい車両だ.しかしそのクモハ12の勇姿を見ることも,もう叶わない.そこで次にそのクモハ12についてまとめておこう.


2 クモハ12



2段組の場合


2段組の標準設定では2つに分けられた本文領域に中央線は引かれない.これは中央線の太さを設定しているパラメータ\columnsepruleが0ptに設定されているためである.もし中央線を引きたい場合はこのパラメータに具体的な値を設定すればよい.パラメータの設定方法についてはp.を参照のこと.

2段組での改ページコマンドの機能

2段組では改ページコマンドの1つである\newpageコマンドの機能が変化します.1段組の場合は単純に改ページするだけですが,2段組の場合はページではなくカラムを変えます.つまり左カラムに\newpageコマンドを記述すれば右カラムに,右カラムに記述すれば次のページの左カラムに移行します.その他の改ページコマンドは1段組の場合と同様の機能を提供します.

4.7.2 twocolumnクラスオプション

twocolumnクラスオプションを指定するには次のように記述します.

\documentclass[twocolumn]{jarticle}

twocolumnクラスオプションを指定すると,最初から文書全体が2段組になります.しかしarticle系のドキュメントクラスを指定しているときは\maketitleコマンド(3.2.1)の出力だけはページ上部に1段組で出力されます.

4.7.3 twocolumnコマンド

2段組にするにはtwocolumnクラスオプション以外にも, \twocolumnコマンドを用いることができます.この場合twocolumnクラスオプションを指定する必要はありません.

文書途中で\twocolumnコマンドを記述すると,その場所で改ページが行われ,次のページから2段組になります.これは同一ページ中に単純に1段組と2段組を混在させることができないことを意味しています.これを回避するには次のように\twocolumnコマンドにオプション引数をつけるとよいでしょう.

\twocolunm[ページ上部で1段組にしたい文章]

これによって改ページ後のページ上部を1段組にできます.この例を次に示します.

\columnseprule = 0.1pt
\begin{document}
\twocolumn[
\begin{flushright}
{\large 2段組の文書にタイトルをつけよう}\\
総合政策学部{\sl 1}年\\
藤沢 花子 ({\sl 70100000})\\
\ [\,{\sl s01000hf@sfc.keio.ac.jp}\,]
\end{flushright}
\begin{center}
\bfseries Abstract
\end{center}\vspace{-5pt}
\begin{quotation}
\begin{small}
このようにすれば本文は2段組のままタイトルをデザインして,さらにabstractまで
つけることができます.少し大変ですが見ためはかなりよくなります.
\end{small}
\end{quotation}
]
\medskip

ここからが2段組部分です.
\end{document}


[tex2html_wrap_inline16958]

2段組の文書にタイトルをつけよう
総合政策学部1
藤沢 花子 (70100000)
[s01000hf@sfc.keio.ac.jp]
Abstract

このようにすれば本文は2段組のままタイトルをデザインして,さらにabstractまでつけることができます.少し大変ですが見ためはかなりよくなります.



ここからが2段組部分です.

width 0.3pt




twocolumnクラスオプションを指定したときの\maketitleコマンド(3.2.1)の出力や,figure*table*環境(p.)の出力は,LaTeX内で \twocolumnコマンドのオプション引数を用いて定義されて いる.そのため2段組にするとページ上部にしか出力されない.

4.7.4 onecolumnコマンド

\twocolumnコマンドとは逆に,本文領域を1段組に戻す場合に用いるのが \onecolumnコマンドです.\onecolumnコマンドも改ページを行ってから1段組にします.ただし\twocolumnコマンドのようなオプション引数はとることはできません.