ここでは,各種の画像ファイル形式について,その特性とおもな利用目的を説明 します.表6.2に各画像ファイル形式の特性を示します.〇は その要素が完全に満たされていることを,△はその要素が一部満たされている ことを表しています.なお,圧縮形式の欄に〇も△もついていないものは 非圧縮を表しています. 利用目的など詳細については,各画像形式の項目で述べます.
ファイル形式 | ビットマップ | ベクトル | 圧縮方式 | 色表現 | ||||
可逆 | 不可逆 | RGB | CMYK | インデックス | グレースケール | |||
TIFF | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
GIF | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
PNG | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
JPEG | ○ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
PS | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
EPS | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
BMP | ○ | ○ | ○ | ○ |
[ビットマップ][非圧縮][RGB,CMYK,グレースケール]
TIFFはビットマップ画像を さまざまなコンピュータ間で交換することを目的として開発された形式で,RGB,CMYK,グレースケール の3種類の色表現で保存できます. 基本的には非圧縮のフォーマットです. 規格としては 圧縮,色数判別,解像度判別や キャプション などのさまざまなオプションが用意されていますが,多くのアプリケーションがそれらのオプションを利用できないため,あまり利用されていません. 画像をスキャナで取り込むときや,画像の編集・加工を行う際,複数のアプリケーションの間でやりとりする際に一般的に使われる形式です.
TIFF形式は規格でサポートしているオプションがあまりにも多岐にわたり,アプリケーションによっては画像データ間での互換性に問題が生 じることがあります.CNS の一般的なアプリケーションを利用する場合にはあまり 問題は起きませんが,注意が必要です.拡張子は一般的に `.tiff'または`.tif'です.
[ビットマップ][可逆圧縮][インデックスカラー,グレースケール]
GIFはネットワークを通じた画像転送を目的として開発された画像形式です. 透明化(Transparency)といわれる``透明な色''を定義するオプションや,インターレースという,表示を行う際に最初は荒く次第に細かい部分まで表示するオプションも指定できます.
色は最大256色(8bit)のインデックスカラーしか扱えないため,1枚の画像で利 用可能な色数は256色までに制限されます. 拡張子は一般的に`.gif'です.
圧縮アルゴリズムの特許をUnisys社が所有しているため, ライセンスをもっているソフトウェア以外で作成したGIFファイルを WWW上で公開することは禁止されているので注意してください.
[ビットマップ][可逆圧縮][RGB,インデックスカラー,グレースケール]
PNGはネットワークに最適な画像ファイル形式への需要に応えて W3C (World Wide Web Consortium)で制定されたものです. 特にWWWでの利用に焦点がおかれています.
GIFと同様に可逆方式でデータを圧縮しますが,圧縮効率はGIFより高いです.最高 48bitのRGBカラーと16bitのグレースケール,アルファチャンネル(透明度を指 定できる)をサポートしており,表現力の点でGIFよりも優れています.またネッ トワークでの利用を考慮して,GIFよりも美しくインターレース表示できるよ うになっています.
CNS 環境では,UNIXにインストールされている XPaintや GIMP,Macintosh,Windows にインストールされているAdobe Photoshopなどが このファイル形式を扱えます. 拡張子は一般的に`.png'です.
[ビットマップ][可逆圧縮,不可逆圧縮][RGB,CMYK,グレースケール]
スキャナで取り込んだ画像や,ビデオから取り込んだ画像などの自然画像をデジタル化した画像の 圧縮保存にもっとも適しています. 画像によっては,圧縮することで画像のサイズを 非圧縮の状態の数分の1から数10分の1にできます. このため,WWWのインラインイメージなどのネットワークを通じた画像転送では GIFとともに標準的に用いられます.
JPEGはアプリケーションでの保存時にオプションで圧縮率を指定できます. しかし,圧縮率を上げると画像の劣化の度合が大きくなるので,適切な圧縮率を自分で選択する必要があります.
また,JPEGでは可逆圧縮モードも規格としてはサポートされています. しかし,利用できるアプリケーションは制限されます.
画像圧縮方法の適性から,自然画像の保存にもっとも適した形式です. 逆に,3次元CGなどのように完全にコンピュータ上で作られた画像を保存すると,画像劣化が自然画像の場合より目立ちます. 特に完全に同じ色が平坦に続くような部分が画像に含まれる場合は,JPEGで保存すると同じ色だったはずの部分に 若干色ムラがかかったようになってしまうことがあるので,注意する必要があります. 拡張子は一般的に`.jpeg'または`.jpg'です.
[ビットマップ,ベクトル][非圧縮,不可逆圧縮][RGB,CMYK,グレースケール]
PostScriptとは,ページを単位にし,あるページに表示されるグラフィックスやテキストを,コンピュータやプリンタが共通して理解できる 標準的な形式で記述するための``ページ記述言語''です.
PostScript言語は,テキストや ベクトル画像,ビットマップ画像 を扱うための豊富な命令群を持ち,カラーもRGB,CMYKをともに取り扱え,現在コンピュータ上で実現可能な平面画像の構成をほぼすべて表現できます. PostScript言語で記述された画像ファイルを``PSファイル''といいます. 拡張子は一般的に`.ps'です.
CNS のプリンタは,PostScriptプリンタというPSファイルを印刷できるプリンタです. CNS ではプリンタでの印刷時にはテキストファイル,画像ファイル など,どんな形式のファイルであれ,必ずPostScript形式に変換してからプリン タに送る必要があります.
PSファイルとして保存はできても,読み込めないアプリケーションがあります. これらのアプリケーションでは,完成した画像を印刷したいときや,PostScript形式に対応している他のアプリケーションで 部品として取り込みたいときに PostScriptファイル形式を利用します.
また,一般的にあるアプリケーションで作成したPSファイルは,別のアプリケーションではその内容を編集できません. また,すべてのPSファイルを画像として 直接編集できるアプリケーションはありません. PSファイルは,おもに完成した文書ファイルを 画像やレイアウト情報を含めたままやりとりするために 利用されます.
EPSとは,PostScriptのデータの中から,ある図形を構成する部品を抜き出して,その部品全体の大きさなどの画像構成情報を加え,他のアプリケーションで部品として利用できるようにカプセル化したものです. あくまで全体として1つの部品なので,取り込んだ先のアプリケーションでそのファイルの内容は編集できません. 拡張子は一般的に`.eps'です.
EPS形式で保存すると,LaTeXやIllustlatorなどのEPSを部品として扱える他 のアプリケーションに貼り込めます.LaTeXの文書中へ貼り込む方法について はを参照してください.
多くの場合,通常のPSファイルもLaTeXなどで取り込めますが,ページ全体の 構成に支障が出る場合があるので,保存時の選択にPSとEPSの両方があるアプ リケーションでは,EPSを選択します.
[ビットマップ,ベクトル][可逆圧縮,不可逆圧縮][RGB,CMYK,グレースケール]
PDFはPostScriptを基盤に コンピュータ上での閲覧を目的に提唱されたフォーマットです. PostScriptを基盤としているので印刷にも適しており,PostScriptよりもファイルサイズが小さく,リンクを利用してハイパーテキストを構築できるという点で,パンフレットやマニュアルの配布に利用されることがよくあります. ファイル名は一般的に`.pdf'です.
[ビットマップ][可逆圧縮][すべての色表現]
Photoshopの標準画像保存形式です. Photoshopで作業中のデータのほぼすべての情報(パスや選択範囲,パレットの情報,各画像モード,レイヤー情報など) について保存できます. Photoshopで作業中の画像を保存する場合にはこの形式を選択します. ただし,他のアプリケーションでは扱えない場合があります. 拡張子は一般的に`.psd'です.
[ベクトル][可逆圧縮][すべての色表現]
Illustratorの標準画像保存形式です. Illustratorで作業中のデータのほぼすべての情報(パスや選択範囲,パレットの情報,各画像モード,レイヤー情報など) について保存できます. Illustratorで作業中の画像を保存する場合にはこの形式を選択します. ただし,他のアプリケーションでは扱えない場合があります. 拡張子は一般的に`.ai'です.
[ビットマップ][可逆圧縮][RGB,グレースケール]
BMPはWindowsでの標準画像形式です. Windowsとデータをやりとりする場合には,この形式にしておくと便利です.
取り扱える色数は,2色(1bit)から16,777,216色(24bit)までの4種類のモードがあります. 可逆圧縮であるRLE (Run Length Encoding)方式で圧縮が行われます. 拡張子は一般的に`.bmp'です.
[ビットマップ][非圧縮][RGB,グレースケール]
PNM (Portable aNyMap)はピクセルの持っている色情報を,単純に数値化して配列したフォーマットです. PPM (Portable PixMap)はフルカラー,PGM(Portable GrayMap)はグレースケール,PBM (Portable BitMap)は白黒2値 の画像のことを表し,拡張子は一般的にそれぞれ `.ppm',`.pgm',`.pbm' です.
圧縮やカラーパレットによる色の割当などを行っていない状態で データが保存されているため,画像解析や処理が容易に行えます. 特に netpbmコマンド群() では,異なる画像形式への変換 や画像加工を行うための中間フォーマットとして利用されます.
[ビットマップ][非圧縮][RGB,インデックスカラー,グレースケール]
XWDはX Window Systemの表示画面を 画像ファイルとして保存するためのフォーマットです. 表現可能な色数は2色または256色以上で,普通は256色のデータ構成となります. 拡張子は一般的に`.xwd'です.
[ビットマップ,ベクトル][可逆圧縮,不可逆圧縮][RGB,インデックスカラー,グレースケール]
PICTは,MacOS 9以前のMacintoshでの標準画像形式であり,おもにMacintoshで利用されます. 内部にベクトル画像データとビットマップ画像データを混在して保持できます. UNIX上のアプリケーションではうまく処理できない場合がよくあります. MacintoshとUNIXで画像のやりとりをする場合は,あらかじめMacintosh上で他の形式に変換してから行います.
特にベクトル画像の部分に関しては,Macintosh環境で動作するアプリケーションの間でも 互換性がない場合があるので注意してください. ビットマップ画像に関しては,アプリケーションによっては保存時にオプションでJPEG方式による圧縮を 指定できます. 拡張子は一般的に'.pict'です.
[ベクトル][非圧縮,可逆圧縮][RGB]
SVGは,W3Cが制定したWebページで使用するための画像形式です. PostScriptのようにベクトル画像だけでなく,フォント情報やテキストデータも内部に保持できます.
XMLという言語で記述されているため 特別なソフトウェアを用いなくても編集できます. また,HTML (2)と同じようにCSS (3)を使った表現もできます.
圧縮をしないで使うことが多いですが,gzip (8.2.1)で圧縮して使うこともあります. 拡張子は一般的に`.svg',`.svgz'です.