ここでは,各種の画像ファイル形式について,その特性と主な利用目的を説明する.表1.2に各画像ファイル形式の特性を示す.〇はその要素が完全に満たされていることを,△はその要素が一部満たされていることを表している.利用目的など詳細については,各画像形式の項目で述べる.
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[ビットマップ][非圧縮][RGB,CMYK,グレースケール]
ビットマップ画像をさまざまなコンピュータ間で交換することを目的として開発された形式で,RGB,CMYK,グレースケールという3種類の色表現で保存できる.基本的には非圧縮のフォーマットである.圧縮,色数判別,解像度判別やキャプションなどのさまざまなオプションが規格としては用意されているが,多くのアプリケーションがそれらのオプションを利用できないため,あまり利用されていない.
画像をスキャナで取り込むときや,画像の編集,加工を行う際,特に複数のアプリケーションの間でやりとりする際に一般的に使われる形式である.
TIFF形式は規格でサポートしているオプションがあまりにも多岐にわたってしまったため,アプリケーションによっては画像データ間での互換性に問題が生じることがある.CNSの一般的なアプリケーションを利用する場合にはあまり問題は起きないが,注意が必要である.拡張子は一般的に .tiffまたは.tifである.
[ビットマップ][可逆圧縮][インデックスカラー,グレースケール]
GIFはネットワークを通じた画像転送を目的として開発された画像形式である.WWWのインラインイメージとしてJPEGとともに標準的に用いられる.透明化(Transparency)と呼ばれる`透明な色'を定義するオプションや,インターレースと呼ばれる表示を行う際に最初は荒く,次第に細かい部分まで表示するオプションも指定できる.
色は最大256色(8bit)のインデックスカラーしか扱えないため,1枚の画像で利用可能な色数は256色までに制限されている.拡張子は一般的に.gifである.
圧縮アルゴリズムの特許をUnisys社が所有しているため,ライセンスされたソフトウェア以外で作成したGIFファイルをWWW上で公開するのは禁止されているので注意する(第1部 3.5.5).netpbmなどのフリーウェアで作成したGIFファイルは使ってはいけない.
[ビットマップ][可逆圧縮][RGB,インデックスカラー,グレースケール]
PNGはネットワークに最適な画像ファイル形式への需要に応えて提唱されたものである.特にWWWでの利用に焦点を置き,GIFを発展させた形で定義されている.
GIFと同様に可逆方式でデータを圧縮するが,圧縮効率はGIFより高い.最高48bitのRGBカラーと16bitのグレースケール,アルファチャンネル(透明度を指定できる)をサポートしており,表現力の点でGIFよりも優れている.またネットワークでの利用を考慮して,GIFよりも美しくインターレース表示できるようになっている.
CNS環境では,XPaintやGIMP,Macintosh,WindowsにインストールされているAdobePhotoshop 5.5 Jなどがこのファイル形式を扱える.拡張子は一般的に .pngである.
[ビットマップ][可逆圧縮,不可逆圧縮][RGB,CMYK,グレースケール]
スキャナで取り込んだ画像や,ビデオから取り込んだ画像などの自然画像をデジタル化した画像の圧縮保存に最も適している.画像によっては,圧縮によって画像のサイズを非圧縮の状態の数分の1から数十分の1にできる.このため,WWWのインラインイメージなどのネットワークを通じた画像転送ではGIFとともに標準的に用いられる.
アプリケーションでの保存時にオプションで圧縮率を指定できるが,圧縮率を上げると画像の劣化の度合が大きくなるので,適切な圧縮率を自分で選択する必要がある.可逆圧縮モードも規格としてはサポートされているが,利用できるアプリケーションは制限される.
画像圧縮方法の適性から,自然画像の保存に最も適した形式である.逆に,3次元CGなどのように完全にコンピュータ上で作られた画像を保存すると,画像劣化が自然画像の場合より目立ちやすい.特に完全に同じ色が平坦に続くような部分が画像に含まれる場合は,JPEGで保存すると同じ色だったはずの部分に若干色ムラがかかったようになってしまうことがあるので,注意する必要がある.拡張子は一般的に.jpegまたは.jpgである.
[ビットマップ,ベクトル][非圧縮][RGB,CMYK,グレースケール]
PostScriptとは,``ページ''を単位にし,あるページに表示されるグラフィックスやテキストを,コンピュータやプリンタが共通して理解できる標準的な形式で記述するための``ページ記述言語''である.
PostScript言語は,テキストやベクトル画像,ビットマップ画像を扱うための豊富な命令群を持ち,カラーもRGB,CMYKをともに取り扱え,現在コンピュータ上で実現可能な平面画像の構成をほぼすべて表現する能力を持っている.PostScript言語で記述された画像ファイルを``PSファイル''と呼ぶ.拡張子は一般的に.psである.
CNSで利用可能なプリンタはすべてPostScriptプリンタと呼ばれるもので,コンピュータとのデータのやりとりにPostScript言語を用いるため,PSファイルはCNS上のプリンタでそのまま印刷できる.PSファイルは,プリンタが直接理解できる形式であるという意味で,TIFFやGIF,PPMなど他のファイル形式とは異なる意味を持つ.CNSではプリンタでの印刷時にはテキストファイル,画像ファイルなど,どんな形式のファイルであれ,必ずPostScript形式に変換してからプリンタに送る必要がある.
PSファイルとして保存はできても,読み込めないアプリケーションがある.これらのアプリケーションでは,完成した画像を印刷したいときや,他のアプリケーションで部品として取り込みたいときにPostScriptファイル形式を利用する.
また,一般的にあるアプリケーションで作成したPSファイルは,別のアプリケーションではその内容を編集できない.また,すべてのPSファイルを画像として直接編集できるアプリケーションはない.PSファイルは,主に完成した文書ファイルを画像やレイアウト情報を含めたままやりとりするために利用されることが多い.
PSファイルを画面に表示したいときには,ghostviewを利用する.
EPSとは,PostScriptのデータの中から,ある図形を構成する部品を抜き出して,その部品全体の大きさなどの画像構成情報を加え,他のアプリケーションで部品として利用できるようにカプセル化したものである.あくまで全体として1つの部品なので,取り込んだ先のアプリケーションでそのファイルの内容は編集できない.拡張子は一般的に.epsである.
EPS形式で保存すると,LATEXやIllustlatorなどのEPSを部品として扱える他のアプリケーションに貼り込める.LATEXの文書中へ貼り込む方法については第1部 2.7を参照すること.
多くの場合,通常のPSファイルもLATEXなどで取り込めるが,ページ全体の構成に支障が出る場合があるので,保存時の選択にPSとEPSの両方があるアプリケーションでは,EPSを選択する.
EPS形式のファイルの中でも,ビットマップ画像のデータのみを持つファイルを,特にEPSI形式と呼ぶ.
PostScriptでのビットマップ画像の取り扱いには,アスキー形式,バイナリ形式,JPEG形式の3種類がある.画像データサイズは,バイナリ形式ではアスキー形式の約半分,JPEG形式ではさらに縮小できる.一部のアプリケーションやプリンタは,バイナリ形式やJPEG形式の画像情報をうまく取り扱えないので,アスキー形式以外の形式は利用しない方がよい.特に,LATEXのepsfスタイルオプションを用いたEPSファイルの貼り込みでは,バイナリやJPEG形式の大きな画像ファイルを取り込むとうまく処理できないのでアスキー形式を利用すること.また,PostScriptデータを異なるコンピュータ間で転送する場合,バイナリではなくテキスト形式で転送する.
[ビットマップ,ベクトル][可逆圧縮,不可逆圧縮][RGB,CMYK,グレースケール]
PDFはPostScriptを基盤にして,コンピュータ上での閲覧を目的に提唱されたフォーマットである.PostScriptを基盤としているので印刷にも適しており,PostScriptよりもファイルサイズが小さく,リンクを利用してハイパーテキストを構築できるという点で,パンフレットやマニュアルの配布に利用されることが多い.ファイル名は一般的に.pdfで終わる.
[ビットマップ][非圧縮][RGB,グレースケール]
X Window System用のアイコンやマウスカーソルを定義したり作成したりする場合や,ビットマップ画像をX Window Systemのプログラム中で取り扱う場合に使用されるフォーマットである.XBM形式の画像では2色,XPM形式の画像では複数色を扱える.また圧縮は行われない.
ファイルの中にはC言語の配列の形態で画像が保存されており,#defineによるサイズ設定と,配列の要素として定義されたデータ本体からなるため,直接C言語のプログラムに取り込んで利用できる.拡張子は一般的に.xbmや.xpmである.
[ビットマップ][非圧縮][RGB,グレースケール]
PNM (Portable aNyMap)はピクセルの持っている色情報を,単純に数値化して配列したフォーマットである.PPM (Portable PixMap)はフルカラー,PGM(Portable GrayMap)はグレースケール,PBM (Portable BitMap)は白黒2値の画像のことを表し,拡張子は一般的にそれぞれ.ppm, .pgm,.pbmである.
圧縮やカラーパレットによる色の割当などを行っていない状態でデータが保存されているため,画像解析や処理が行いやすい.特にnetpbmコマンド群では,異なる画像形式への変換や画像加工を行うための中間フォーマットとして利用される.
[ビットマップ][非圧縮][RGB,インデックスカラー,グレースケール]
XWDはX Window Systemの表示画面を画像ファイルとして保存するためのフォーマットである.表現可能な色数は2色または256色以上であり,普通は256色のデータ構成となる.拡張子は一般的に.xwdである.
PICTは,Macintoshでの標準画像形式であり,主にMacintoshで利用されている.内部にベクトル画像データとビットマップ画像データを混在して保持できる.UNIX上のアプリケーションではうまく処理できない場合が多い.MacintoshとUNIXで画像のやりとりをする場合は,あらかじめMacintosh上で他の形式に変換してから行う.
特にベクトル画像の部分に関しては,Macintosh環境で動作するアプリケーションの間でも互換性がない場合があるので注意すること.ビットマップ画像に関しては,アプリケーションによっては保存時にオプションでJPEG方式による圧縮を指定できる.拡張子は一般的に.pictである.
Photoshopの標準画像保存形式である.Photoshopで作業中のデータのほぼすべての情報(パスや選択範囲,パレットの情報,各画像モード,レイヤーの別など)について保存できる.なお,Photoshopのバージョンによって形式が異なるので注意する必要がある.CNSでは,SGI O2で使用可能なバージョンは2.5,Windows,Macintoshで使用可能なバージョンは5.5であるが,5.5では2.5のファイルも取り扱えるので,両者で互換性を持たせたい場合は,2.5形式で保存する.拡張子は一般的に .psdである.
[ビットマップ][可逆圧縮][RGB,グレースケール]
BMPはWindowsでの標準画像フォーマットであり,IBM PC互換機などで標準的に使われるファイル形式である.Windowsなどとデータをやりとりする場合には,この形式にしておくと便利である.
取り扱える色数は,2色(1bit)から16,777,216色(24bit)までの4種類のモードがある.可逆圧縮であるRLE (Run Length Encoding)方式で圧縮が行われる.拡張子は一般的に.bmpである.
[ビットマップ][非圧縮,可逆圧縮][RGB,グレースケール]
IRIS RGBは,SGI O2などSilicon Graphics社のワークステーションのオペレーティングシステムであるIRIX上で標準的に利用されるビットマップ画像形式である.
RGB,およびグレースケールでの表現色数に制限はない.基本的に非圧縮だが,RLE圧縮のオプションを指定できる.拡張子は一般的に.rgb
である.
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