FTPは異なるファイル空間の間でファイル転送を行うためのプロトコル(通信手順)である.例えばパーソナルコンピュータ(以下PCと表記)や研究会が管理しているワークステーション,他キャンパスのワークステーションなどとCNSの間でファイルを転送する際に利用する(図4.1).
次に,FTPによるファイル転送のおおまかな手順を示す.
ファイルには,テキストファイルとバイナリファイルがある.テキストファイルは,LATEXのソースファイルなど,文字列のみで構成されたファイルである.バイナリファイルは,実行形式のファイルや画像ファイルなど,文字列以外の情報で構成されたファイルである.
FTPでは,テキストファイルを転送するにはアスキーモード(ascii),バイナリファイルを転送するにはバイナリモード(binary)を選択する必要がある.アスキーモードを選択すると改行文字などを自動的に変換する.ローカルホストとリモートホストが同じ環境である場合は,変換する必要はなく,テキストファイルをバイナリモードで転送してもよい.
日本語の形式はシステムによって異なり,UNIXではJIS (ISO-2022JP)形式が,WindowsやMacintoshではShiftJIS (MS漢字コード)が使われている.このため,異なるシステム間で日本語を含むテキストファイルの転送を行うと文字化けを起こすことがある.文字化けを直すには,UNIXのnkfコマンドを利用する.
インターネット上にはFTPのファイル転送機能を利用して,プログラムやドキュメントを一般公開しているanonymous ftpサーバと呼ばれるコンピュータがある.
anonymous ftpサーバでは匿名(anonymous)のユーザに対してログインが許可されており,プログラムやドキュメントを自由にダウンロードできる. 匿名アカウントでログインしたユーザは,公開されているファイルをダウンロードすることだけが許可されているので,ファイルをanonymous ftpサーバにアップロードしたり,公開されていないファイルはダウンロードできない.
転送の速度はサーバによって違うので,同じファイルを公開しているanonymous ftpサーバが複数ある場合には,なるべくネットワークに余裕があり,転送速度の速いサーバを利用すること.
慶應義塾大学のネットワーク内には bash.cc.keio.ac.jpなどのanonymous ftpサーバがある.ダウンロードするファイルが,どのanonymous ftpサーバで公開されているかを調べるには,archieコマンドを利用する.
anonymous ftpサーバにログインするには,ログイン名として`anonymous'もしくは`ftp'を,パスワードとして自分のメールアドレスを入力する.パスワードの代わりにメールアドレスを入力するのは,ダウンロードしたプログラムに致命的な欠陥(バグ)が見つかった場合に,そのプログラムをダウンロードしたユーザに連絡を取るためである.
anonymous ftpサーバでは,ファイル名を`ディレクトリ名.tar.gz'として転送することで,目的のディレクトリに存在するファイルを1つのファイルに圧縮してダウンロードできる.
anonymous ftpサーバで公開されているファイルは,名前が` .tar.Z'や`.tar.gz',`.lzh',`.sit.bin'などで終わっているものが多い.これらのファイルは圧縮されているので,ダウンロードした後に解凍する必要がある.解凍方法については,第1部 1.4を参照すること.
また,00READMEやREADMEという名前のファイルには,そのディレクトリ以下のファイルの使用上の注意などが書いてある.また, ls-lRからはじまる名前を持つファイルには,そのディレクトリ以下のすべてのファイル一覧が記録されている.