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1.5 日本語の入力

日本語のかなと漢字の混じった文書をワークステーション上で作成する場合,かなを漢字に変換する必要がある.CNSではWnnと呼ばれるかな漢字変換システムを利用している.キーボードによってはキートップにひらがなや片仮名が書いてあるものや,変換キーのあるものもあるが,これらを利用した日本語入力は行えない.日本語の入力は,`たまご'と呼ばれるMule上のかな漢字変換システムを用いて行う.

たまごの名前の由来

たまごは電子技術総合研究所の戸村哲氏が中心となり開発されたシステムである.名前の由来は,開発に長期間を要したことに対する開発者のメッセージ`たくさん/待たせて/ごめんなさい'の頭文字をとったものである.また,卵は料理の基本材料であり,EGGシステムも日本語入力の基本材料となってほしいという願いもこめられている.CNSで使うたまごは`たかな'バージョンと呼ばれるものである.この名前は`たまごよ/かしこく/なーれ'からきている.

1.5.1 変換モード


透過モード

Muleのモードラインの左端が,次のように`[-]'になっている状態をたまごの透過モードと呼ぶ.

[--]J_:-----Mule: *scratch*    (Lisp Interaction)----All----------
を起動したときは透過モードになっている.このとき,入力したキーはそのままアルファベットで入力される.


ローマ字かなモード -- (C-\)

透過モードでC-\(C-)を入力すると,たまごが起動されローマ字かなモードに切り替わる.ローマ字かなモードに切り替わるとモードラインの左端が`[]'に変わる.

[あ]J_:-----Mule: *scratch*    (Lisp Interaction)----All----------
ローマ字かなモードではローマ字を用いてひらがなを入力できる.透過モードに戻るためには, C-\(C-)をもう1度入力する.

C-\(C-)を入力しても,モードラインが`[aa]'や`[aA]'となり,かな漢字変換ができなくなってしまう場合は, C-x C-k mを入力すると次のメッセージが表示されるので,``1.roma-kana''を選択すれば,かな漢字変換モードに戻る.

Mode:  0.PinYin  1.roma-kana  2.roma-kata  3.downcase  4.upcase


1.5.2 フェンスモード

ローマ字かなモードで文字を入力すると,ローマ字仮名変換されたひらがなが,縦棒2本の間に表示される.例えば,キーボードから`keiougijukudaigakushounanfujisawakyanpasu'と入力すると,次のようにウィンドウに表示される.

|けいおうぎじゅくだいがくしょうなんふじさわきゃんぱす|
ひらがなの両側の縦棒をフェンスと呼び,フェンスの出ている状態をフェンスモードと呼ぶ.フェンス内での文字の編集は,基本的には透過モードの場合と同じである(表1.5).



表 1.5: フェンスモードでの文字の編集
キー操作 意味
C-b カーソルを左に移動
C-f カーソルを右に移動
C-d カーソル位置の文字の消去
<BS> カーソルの前の文字の消去
<SPACE> C-w かな漢字変換の開始


`ゃ',`っ'などの入力

小さい`ゃ'は次のようにyを入力することにより,小さい`っ'は次のように子音を重ねることにより入力できる.

kyanpasu → きゃんぱす hasshin → はっしん

また,この小さい`ゃ',`っ'などは次のようにxを前につけても入力できる.


xa   xi   xu   xe   xo  
xya   xyu   xyo   xtu   xwa  


`ん'の入力

ローマ字入力では`はんい'のように`n+母音'のときや,`きんよう'のように`n+y+母音'を入力するときは次のように`n'',`N'の2つの方法で,`ん'を入力できる.


hani はに   kinyou きにょう
han'i はんい   kin'you きんよう
haNi はんい   kiNyou きんよう


その他

ローマ字入力の際,入力しにくいかな文字を次に示す.

wi   we   vu
di   du        

また,キーボードの表記と,実際にウィンドウに表示される文字とが異なるものを次に示す.


, (カンマ) 、(句点)   [   -
. (ピリオド) 。(読点)   ]        


1.5.3 漢字変換モード -- (<SPACE>, C-w)

フェンスモードで,<SPACE>またはC-wを入力すると,かな漢字変換を行える.かな漢字変換中,モードラインは次のようになる.

[漢]J_:-----Mule: *scratch*   (Lisp Interaction)----All----------
また,フェンスの中は次のようになる.

|応義塾大学 小難 藤沢 キャンパス|
この状態を漢字変換モードと呼ぶ.フェンスの中は空白` 'によって文節に区切られている.この例では,`慶応義塾大学',`小難',`藤沢',`キャンパス'の計4つの文節がある.


はじめてかな漢字変換を行うときには,自分用の辞書を作るかどうかの問い合わせがエコーエリアに表示される.これに対してはすべてyと答えること.


かな漢字変換の修正

文章を文節や単語単位に分解することで,より正確なかな漢字変換を行える.1度で希望通りに変換されないときは文節を修正する必要がある.かな漢字変換は文節ごとに行われており,変換違いの修正は文節ごとに行う.修正は現在カーソルのある文節に対して行われる.かな漢字変換の修正に関するキー操作(表1.6)と具体例を示す.



表 1.6: かな漢字変換の修正/確定
キー操作 意味
C-b 左の文節への移動  
C-f 右の文節への移動  
C-a 行頭の文節への移動 [0pt]文節の移動
C-e 行末の文節への移動  
<SPACE> C-n 次候補を出す  
C-p 直前の候補を出す 文節の再変換
M-s 候補の一覧をエコーエリアに表示する  
C-i 文節を短くする  
C-o 文節を長くする [0pt]文節の区切り方の変更
<RET> C-l 変換結果の確定  
C-k カーソル以前の文節だけを確定 [0pt]変換結果の確定


まず,`慶應義塾大学'という単語を出すために,<SPACE>を繰り返し押して次候補を出す.この場合は<SPACE>を1回押した時点で`慶應義塾大学'という単語が出たので,この文節は確定である.

|応義塾大学 小難 藤沢 キャンパス|
|應義塾大学 小難 藤沢 キャンパス|
C-fで次の大文節に移る.<SPACE>を2回押した時点で``湘南''が出て,この文節も確定である.

|慶應義塾大学 難 藤沢 キャンパス|
|慶應義塾大学 南 藤沢 キャンパス|
|慶應義塾大学 南 藤沢 キャンパス|

かな漢字変換の確定

変換結果を確定するには,C-lまたは<RET> を入力する.これによりフェンスは消え,ローマ字かなモードに戻る.また,C-kによってカーソルより前の文節を確定し,カーソル以降の文節のみをフェンスモードに残すこともできる.

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス_

かな漢字変換候補の一覧の表示

かな漢字変換の際にM-sを入力すると,次のようにかな漢字変換での候補の一覧がエコーエリアに表示される.

次候補:  0.慶応義塾大学  1.慶應義塾大学  2.ケイオウギジュクダイガク
ここでC-f,または1を入力して,カーソルを``1.慶應義塾大学''に移し,<RET> を押して候補を確定できる.

|應義塾大学 小難 藤沢 キャンパス|


1.5.4 特殊な文字の入力

かな漢字変換での入力

ほぼ全ての記号はかな漢字変換によって入力できる.例えば,`まる'を変換すると`●',`○',`◎',`◯'が候補として現れる.また,キーボードに書いてある記号を変換して次候補をとると,全角の記号が現れる.例えば,`%'を変換すると`'が候補として現れる.

`z+1文字'入力

普段日本語のかな漢字変換に利用されない`z'を利用して,`z+1文字'でも記号を入力できる(表1.7).また,大文字のZに1文字を加えると,その文字が全角となって表示される.

zn   Zn


表: ` z+1文字'入力できる記号
入力 記号 入力 記号 入力 記号 入力 記号 入力 記号 入力 記号 入力 記号 入力 記号
z1 z! z2 z@ z3 z# z4 z$
z5 z% z6 z^ z7 z& £ z8 ¢ z* ×
z9 z( z0 z) z- z_ z= z+ ±
z\ z| z` ´ z~ ¨                

zq

zQ zw zW zr zR zt zT §
zp zP z[ z{ z] z}        

zs

zS zd zD zf zF zg zG
zh zj zk zl z; z: z' z"

zx

:- zX :-) zc zC zv zV ÷ zb ° zB
zn zN zm zM z, z< z. z>
z/ z?                        

`q/Q+文字列'入力

小文字`q'または大文字`Q'に続けてキーを入力すると,ひらがなではなくそのままローマ字で表示される.小文字`q'に続けると半角ローマ字で,大文字`Q'に続けると全角ローマ字で入力できる.例えば,`qkeiougijukudaigaku'と入力すると,次のようにかなに変換されずに表示される.

|keiougijukudaigaku|

`~+1文字'入力

ローマ字かなモードで,`~'につづいて入力された文字はひらがなにはならない.例えば,`~n'と入力することによって,透過モードに戻ることなく,小文字のnを入力できる.

<CTRL>- による入力

C-^を入力すると,次のメニューがエコーエリアに表示され,JISコードによる漢字のコード入力,記号やギリシャ文字の入力などを行える. C-bC-f,または0から5までの数字キーなどを使ってカーソルを移動し,<RET>で確定する.

0.JIS入力  1.記号  2.英数字  3.ひらがな  4.カタカナ  5.ギリシャ文字
上記のメニューからC-nを入力すると次のメニューが表示される.逆に,下記のメニューからC-pを入力すると上記のメニューに戻れる.
0.ロシア文字  1.罫線  2.部首入力  3.画数入力  4.第一水準  5.第二水準
上記のメニューの状態で,<RET> を押すと,`ロシア文字'が選択され,次のメニューが表示される.選択したい文字の番号にカーソルを移動し,<RET>を押して文字を入力できる.

0.А  1.Б  2.В  3.Г  4.Д  5.Е  6.Ё  7.Ж  8.З  9.И  10.Й


1.5.5 ユーザごとの辞書管理

かな漢字変換で,よく使う単語が1度で変換できないのは不便である.このような場合,ユーザは自分用の辞書に単語を新たに登録できる.Wnnでは,各ユーザが別々に辞書,頻度情報を持っているので,かな漢字変換を使うにつれて各ユーザにあった変換がなされる.


辞書への単語登録 -- (M-x toroku-region)

`アドグル'という単語を辞書に登録する例として説明する.

1.
登録する単語をリージョンにする
登録する単語の1文字目にカーソルを移動してC-<SPACE>または C-@マークをセットし,登録したい単語の始点を決定する.その後,登録したい単語の1文字後ろにカーソルを移動して,M-x toroku-regionと入力する.

ドグル   ←ここでC-<SPACE>またはアドグル_C-@を押してマークをセット
             カーソルを単語の1文字後ろに移動
   ←ここでM-x toroku-regionと入力

2.
エコーエリアに次のように表示され,カーソルがエコーエリアに移動する.

[あ]辞書登録『アドグル』  読み : _

4.
もし,リージョンの設定を間違えて`『'と`』'の間に登録したい単語が表示されなかったときは, C-gを入力し,再度リージョンの選択をやり直す.



5.
登録する単語の読みを入力する
この例では,次のように`あどぐる'と入力する.

[あ]辞書登録『アドグル』  読み : あどぐる_

5.
辞書設定
読みを入力した時点で,次のような登録する辞書を設定するメニューが表示される.<RET>を押して登録する辞書をprivateに設定する.

登録辞書名:   0.private

6.
品詞設定
辞書を設定すると,次のような品詞を設定するメニューが表示される.表示されていないが,他に`その他の独立語',`接頭語,接尾語',`単漢字',`疑似品詞'があり,この中から品詞を選択できる.`アドグル'は固有名詞なので,カーソルを固有名詞のところに移動し,<RET>を押す.

品詞名:  0.普通名詞/ 1 .固有名詞/ 2.動詞/ 3.特殊な動詞/ 4.動詞以外の用言/

7.
品詞内の詳細設定
品詞を設定すると,今度は固有名詞の中でより詳しい情報を設定するメニューが表示される.

品詞名:  0./  1 .人名  2.地名  3.人名&地名 4.固有名詞  5.姓  6.名

7.
ここで,`0./'を選択すると,1つ前の品詞設定のメニューに戻れる.
8.
`アドグル'は固有名詞なので,`4.固有名詞'のところにカーソルを移動し<RET>を押す.次のようなメッセージが表示され,辞書登録が終了する.

辞書項目『アドグル』(あどぐる : 固有名詞)をprivateに登録しました.


Wnnは,連文節変換を行うサーバと,ローマ字変換,ユーザインタフェイスを行うクライアント部分に分かれている.クライアント部分にはWnnの一部として配られたもの以外に,いくつかのシステムが存在する.Muleのかな漢字変換システムである`たまご' もその1つである.



1.5.6 ログイン名の変換

CNSのユーザの名前は,原則としてすべて辞書に登録されている.ただし,1年生の名前が登録されるまでには,しばらく時間がかかる.名前を変換して次候補を表示させていくことにより,名前からログイン名を調べたり,逆にログイン名を変換して名前を調べたりできる.

例えば,``うの''を変換すると,うの→鵜の→鵜野→宇野→unodb(鵜野 公郎)→ ...となり,逆に``unodb''を変換すると,鵜野 公郎(うの きみお)→unodb→unodb→ ...となる.

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