LaTeX/LaTeXによる文書の整形/文字を修飾する

LaTeXでは1文字単位で文字の修飾を行うことができます.

2.1.1 書体の変更

LaTeXでの書体は次の3種類に分類できます.

  • ファミリー(family)指定



  • シリーズ(series)指定



  • 字形(shape)指定


また,書体の指定方法には次の2種類の型があります.

  • 宣言型



  • 命令型


上記の2つの違いはコマンドの有効範囲の違いです.

宣言型は中括弧(`{}')に囲まれた部分が有効範囲になります.範囲を指定するためには,中括弧を用いてグルーピングします.これに対し命令型は中括弧に囲まれた引数を1つとるので,そのコマンドの有効範囲は引数の部分のみです.書体の変更範囲が広い場合は宣言型の指定を,狭い場合は命令型の指定を行います.

ファミリー

デザインの上で同一の系統に属する書体の類をファミリーと呼びます.ファミリーを指定することで書体の装飾方法を変更できます.表2.1にファミリーによる書体指定を示します.


表 2.1: ファミリーによる書体指定
書体 指定(宣言) 指定(命令) 出力
ローマン体 \rmfamily roman \textrm{roman} roman
サンセリフ体 \sffamily san serif \textsf{san serif} san serif
タイプライター体 \ttfamily typewriter \texttt{typewriter} typewriter
明朝体 \mcfamily 明朝体 \textmc{明朝体} 明朝体
ゴシック体 \gtfamily ゴシック体 \textgt{ゴシック体} ゴシック体

シリーズ

活字を文字の線の太さ,文字幅で分類したものをシリーズと呼びます.シリーズを指定することで文字の線の太さを変更できます.表2.2にシリーズによる書体指定を示します.


表 2.2: シリーズによる書体指定
書体 指定(宣言) 指定(命令) 出力
ミディアム \mdseries medium \textmd{medium} medium
ボールド \bfseries boldface \textbf{boldface} boldface

字形

活字を形で分類したものを字形と呼びます.字形を指定することで文字の傾き具合を変更できます.表2.3に字形による書体指定を示します.


表 2.3: 字形による書体指定
書体 指定(宣言) 指定(命令) 出力
立体 \upshape upshape \textup{upshape} upshape
イタリック体 \itshape italic \textit{italic} italic
スモールキャップ体 \scshape Small Capital \textsc{Small Capital} SMALL CAPITAL
斜体 \slshape slanted \textsl{slanted} slanted

2.1.2 書体のサイズの変更

LaTeXでは書体のサイズは相対的に指定します.つまり,基準の大きさ(jartcileクラスでは10pt)を \normalsizeとして,そこからの大小を相対的に指定します.表2.4\normalsizeが10ptの場合の文字の大きさを示します.


表 2.4: 基準が10ptの場合の文字の大きさ

指定 大きさ
\tiny Font size
\scriptsize Font size
\footnotesize Font size
\small Font size
\normalsize Font size
指定 大きさ
\large Font size
\Large Font size
\LARGE Font size
\huge Font size
\Huge Font size

書体のサイズを指定するコマンドは,コマンド直後の文字から新たにサイズを指定するコマンドが出現するまで有効となります.よって,範囲を指定してサイズを変更する場合にはグルーピングによってそのコマンドの有効範囲を制限する必要があります.

2.1.3 文字修飾コマンド

文書に下線を引く\underlineコマンドと,フランス語やドイツ語のレポートを書く際に必要となるアクセントや記号を記述する方法について説明します.

文書に下線を引く

文書に下線を引くには\underlineコマンドを使用します.次に例を示します.


これで\underline{下線}が引けます.



これで下線が引けます.


\underlineコマンドで下線を引く文字列は途中で改行できません.下線の途中で改行したい場合は,出力を見てどこに改行を入れるべきか確認し,もとの\underlineコマンドを2回に分けて使用します.この際,2つの\underlineコマンドの間に1つ以上の空白を入れないと改行が行われないので注意してください.次に例を示します.


\underline{改行するためにはコマンドを}
\underline{2回使います.}



改行するためにはコマンドを

2回使います.


アクセント類の出力

アクセント類を表すコマンドはアクセントをつける文字を引数として指定します.表2.5にアクセント類を表すコマンドを示します.


表 2.5: アクセント一覧
アクセント一覧

次にアクセント類を表すコマンドを使用した例を示します.


Kekul\'{e},W\"{o}heler,Amp\`{e}re



Kekulé,Ŵoheler,Àmpere


英語以外の文字・記号の出力

2.6,表2.7に英語以外の文字,および記号の一覧を示します.


表 2.6: 英語以外の文字一覧
英語以外の文字一覧


表 2.7: 記号一覧
記号一覧

2.1.4 特殊文字の出力

LaTeXにはコマンドの先頭を表す`\'やコメントアウトを行う`%'など,多くの特殊文字が存在します.これらの特殊文字はそのままでは出力できないため,特別なコマンドを使用する必要があります.特殊文字とその出力方法を表2.8に示します.なお,\verbコマンド はソースファイルに書かれたものを整形せずにそのまま出力するコマンドです.


表 2.8: 特殊文字の出力
コマンド 出力 コマンド 出力
\{ {
\verb+^+ ^ \} }
\verb+_+ _ \# #
\verb+~+ ~ \$ $
\% % \& &